
ROEの為替影響を実例解説
円安になればROEがどうなるかについて試算しました。結論は会社次第なのですが、じゃあ自分の会社の場合はどうなのかを判断するための情報をまとめてみました。
ROE(自己資本利益率)=当期純利益÷自己資本×100
円安により、当期純利益も自己資本も増える方向になる日本のグローバル企業を想定しています。外貨を稼ぐゆえに円安により当期純利益が良くなりますが、自己資本にある為替換算調整勘定の評価が円安により拡大する(=自己資本が大きくなる)
でも、分子も分母もどちらも大きくなるので、結局円安はROEの数字を良くするのか、悪くするのかどちらだろう?と気になって調べました。
為替の基礎は以下の記事を参照ください。
少し分かりづらい為替換算調整勘定については以下にまとめています。
以下のシミュレーションを立てて考えてみました。
企業モデル:親会社は日本企業(円)で米国の子会社(USD)を100%保有している。
T期(ベース):為替は期中・期末ともに1ドル100円。
T+1期(円安):1ドルの期中平均レート(AR)=110円、期末レート(CR)=120円と期を通して円安が進行。
米国子会社のP/L:T+1期の業績が好調で、USDベースの利益はT期から増加($80→$100)
米国子会社のB/S:資本金が$200で、T期の利益剰余金は$300(T+1期は$100の利益増により$400)
配当 :T+1期は配当なしと配当あり(DOE3%)のケースを想定 ※DOEは期末純資産の3%を配当と簡易で試算。
上記シミュレーションを図式化しました。

結果の特徴を文章にすると、
1.外貨で考えればROEは改善されている
T期は$80÷$500=16.0%
T+1期は$100÷$600=16.7%
2.邦貨で考えると、円安によりROEは低下した
T+1期では稼ぐ利益は増え($80→$100)分子に大きな影響を与えたにも関わらず為替評価にてROEは低下した。
3.配当ありの場合、低下幅は低減する
配当をすることで、純資産(分母)を減らすことができたので、ROEの低下影響は低減された。
でしょうか。ただ、これは1つのシミュレーションの結果でしかなく、状況によっては逆の動きをすることもあります。
ROEが改善す るシミュレーションも作成しました。黄色でハイライトしている箇所が変化している箇所です。(B/Sだけを大きくした)

この例だと、ROEは8.0%→8.3%と改善したことがわかります。(配当をすると8.6%と更に改善します)
つまり円安によりROEがどうなるかは会社次第ということになります。
次にROEが良くなるのか、悪くなるのかをどういう条件で判断できるかを調べてみました。

この記事を読んでくれた人の会社でも再現しやすい仕組みを考え、為替感度を活用しました。
ROE為替感度=PLの為替感度÷B/Sの為替感度
と勝手ながら表現すると、結論としては、
現在のROEに対し、ROE為替感度が大きいとROEは悪化
現在のROEに対し、ROE為替感度が小さいとROEは改善
になります。
ざっくばらんにいうとROEが低い企業にとっては円安はROEにプラスに働きやすく、一定以上の優良企業になれば円安はマイナスに働きやすいということです。
実例で解説していきます。
前提:利益 100 ÷ 自己資本 1,000 = ROE 10.0%
1円の円安によりi)、ii)、iii)の感度があったとする。
i) P/L(利益)+10、B/S(自己資本)+100 の場合(10%)
(100 + 10) ÷ (1,000 + 100) = ROE 10.0%
(→ ROE変化なし)
ii) P/L(利益)+5、B/S(自己資本)+100 の場合(5%)
(100 + 5) ÷ (1,000 + 100) = ROE 9.5%
(→ ROE悪化)
iii) P/L(利益)+15、B/S(自己資本)+100 の場合(15%)
(100 + 15) ÷ (1,000 + 100) = ROE 10.5%
(→ ROE改善)
どの会社も概算のP/L、B/Sの為替感度は把握していると思います。それらで割って出てきたROE感度と、現在のROEの絶対値を比較すれば自社にとって、円安がROEにとって良い影響を出すかどうかがわかるという仕組みです。
長くなりましたが、ご一読ありがとうございました。


