
為替換算調整勘定を実例解説(B/Sの為替リスク)
為替換算調整勘定(為調)について実例解説する記事をまとめましたが、今度は為調をどう受け止めて、事業や経営に活かせばよいかについてまとめます。
結論を言うならば、P/Lの為替リスクは為替感度ですが、B/Sの為替リスクが為調です、になります。
具体的な解説をする前に、この記事は為調の基礎知識と、財務諸表においてどのレートを使うのが正しいか、という知識が必要ですので、必要に応じ、以下の記事を参照ください。
ではB/Sの為替リスクを具体的に図式化してみます。B/Sの科目ごとに利用する為替レートが違うために差(為調)が発生するわけですが、項目ごとに解説していきます。

1.資本金について
資本金はHRで評価され、一度価値が評価されると減損や会計基準の変更等特殊な事情が無ければ変わることはありません。よって半永久に残る為替リスクになります。
これを意図的に解消することはハードルが高いですが、例えば減資して強制的に小さくすることが1つです。が、日本でも大企業が中小企業になることで物議を醸した通り、国・地域によっては過小資本は現地のカントリーリスクが発生しうるので税務の観点等も注意した選択が必要です。
更に1歩踏み込むならば、最初から資本注入は少なくし、貸 付金(負債)で資金を提供する方法もありますが本末転倒にならないように注意ください。事業運営がうまくいくための資本構成であり、リスク低減のための資本構成ではありません。
2.剰余金について
毎年の利益(剰余金)はARで評価されます。期間平均の為替レートで評価されるためにリスク自体は少なく見えますが、ポイントは累積されるところです。過去に評価された円貨の価値は覆らないために、累積された外貨の評価額次第では、単年度の円安・円高効果は想定外の動きをします。
この影響を排除するには配当で外貨を吸い上げることです。
現地で更なる投資するときの原資として外貨を残しておきたい、配当にかかる税金がもったいなく感じる、現地法人が配当するのを渋っている、といった様々な理由で配当されず、気が付けばキャッシュリッチな会社になっていませんか?
具体的な使い道がないお金があるのはただの余剰資金で為替リスクの前に経営上不健全な状態でもあるので注意してください。
3.資産と負債について
資産・負債の科目はCRで評価されます。これは比較的リスクは少ないといえます。そもそも二つの科目でネットして考えることもができますし、資産も清算すると仮定すれば現時点の価値で現金化できるといえるからです。
剰余金の箇所でも述べた通り、不要な資産(現金)があるならば、定期的な配当等で回収することがおすすめです。
今は円高だからやめておこう、といった恣意性があると機能しなくなるので、毎年3割配当する、といったルールとその実行が重要です。本来、経営者 の意思次第で配当性向も変化可能ですが、会社ごとに判断を分けると、不公平感から社内でいらぬ軋轢を生んでしまいます。そのため、公平性を持つ施策が肝要かと思います。
為替リスクの観点で事業運営を考えることは少ないですが、海外拠点から為替を切り離せるものでもなく、1つの見方として認識いただけたら幸いです。
ご一読ありがとうございました。