設備投資計画における採算性の計算方法(基礎編)
事業会社で管理会計をしていると投資の採算性の計算業務があります。過去資料を元になんとなく数字はできているけれど根本的な基礎知識の理解ができていなかったり、それがゆえに応用が出来なかったりということがあり、必要な知識と応用についてまとめてみました。
まず投資の採算性を計算するには現在価値の知識が必要なので説明します。
1.現在価値とは
お金は手に入れるタイミングで価値が違います。1年後に手に入る100万円と今すぐ手に入る100万円。1年後に手に入る人が辛抱している間に、今すぐに手に入れることができた人はその1年間で買い物したり食事に行ったりと100万円の効果を受け取ることができるので、今すぐ手に入れたいとほとんどの人が思うでしょう。
では新たな選択肢が加わり1年後に手に入る金額は105万円の時はどうでしょう?人によっては1年後の105万円が良いかもしれません。では2年後に115万円の時はどうでしょう?様々な選択が出てきたときに、なんとなくこっちが良い、では意思決定をしているとは言えません。どれが一番お得なのか?を明らかにするために「現在価値」の概念が役に立ちます。異なる時期に発生する価値を比較するために、将来の価値を「現在価値」に評価して比べられるようになるからです。では次に将来価値について説明します。将来価値を現在価値で表現する方法は銀行で考えるのが一番わかりやすいです。
2.将来価値とは
昨今の超低金利の日本の銀行では金利は0.001%程度の所が多いです。これは100万円預けたら1年後+10円が手に入るということです 。(本当は税金もかかりますが、今は例のため割愛します。)と脱線しましたが1年後に手に入るお金(将来価値)は現在価値に利率を掛けたもので、 将来価値=現在価値×(1+r)^n r:利率 n:年数 と表現することができます。ここで伝えたいことは、この数式を置き換えると、 現在価値=将来価値÷(1+r)^n と表現できる点です。つまり、将来価値、利率を元に現在価値を算出することができるということです。
例)手元の100万円を5%で運用したら・・・
将来価値(1年後) 100×1.05=105
将来価値(2年後) 105×1.05=110
将来価値(3年後) 110×1.05=116
将来価値(4年後) 116×1.05=122
将来価値(5年後) 122×1.05=128
現在の100万円は5年後の128万円と等価と表現できる。
では事業の採算性における将来価値、つまりフリーキャッシュフロー(FCF)について説明します。
3―1.フリーキャッシュフロー(FCF)とは
そもそも財務三表の一つであるキャッシュフロー計算書によって、キャッシュフローは「営業活動によるキャッシュフロー」、「投資活動によるキャッシュフロー」、「財務活動によるキャッシュフロー」の3種類に分類されます。そしてフリーキャッシュフローはフリーキャッシュフロー=営業活動キャッシュフロー+投資活動キャッシュフローと定義されることが一般的です。投資活動CFの正負表現次第で、営業活動-投資活動と表現するところもありますが、要はこの二つの影響を織り込んだものがフリーキャッシュフローとなります。
なぜフリーというかというと、そのキャッシュを自 由(フリー)に使うことができるからです。ですが「誰が」フリーに使えるのでしょうか?企業でしょうか?それだったらそもそも全てのキャッシュが企業活動で(ある程度)フリーに使えていますよね?このフリーは債権者や株主にとってフリーであることと理解しておきましょう。営業、投資活動の結果残ったキャッシュを債権者は利息を要求しますし、株主は配当を要求します。それらをフリーキャッシュフローから支払うという形です。
ちなみにですが、受取利息・受取配当金は投資活動によるキャッシュフロー、それに対し支払利息・支払配当金は財務活動によるキャッシュフローとみなされます。これは発生原因から考えると、受取利息や受取配当金は投資の結果であり、逆に資金調達手段である借入金や株式にかかる費用は財務活動の結果だからです。そして上述の通り債権者や株主にとってフリーに使えるキャッシュフロー(営業CF+投資CF)から債権者や株主に還付する分を差し引くと考えるとわかりやすいですね。
とはいえ実務上は受取利息も支払利息も損益計算書の項目で表現していること、受取配当金も事業性質上やアライアンス強化による株の持ち合い等完全に投資目的ではない時もあること等から、受取利息・受取配当金・支払利息を営業活動によるキャッシュフローに、支払配当金は財務活動によるキャッシュフローに計上する運用も認められており、こちらの方が一般的です。学んだ理屈と実態が違うのでなぜ、と感じやすいので理由を押さえておけばわかりやすいと思います。
3-2.フリーキャッシュフロー(FCF)の計算式
上場会社でキャッシュフロー計算書を開示している会社の場合はフリーキャッシュフローを算出可能ですが、非上場の時は開示されていないことが多いですし、自分の担当事業だけのフリーキャッシュフローを算出したい場合はこのままでは算出できません。そういう場合のためにもう一つの考え方(計算式)があります。