ROICがズレる理由
ROIC(投下資本利益率)の実績値が予想と大きく違ってなぜ?と困ったりしていませんか?ただ何でもかんでも分析というのも正直意味がなく、あるべきはROIC改善による事業価値向上です。その方法は別途まとめるとして、ROICの想定外の差異が出る計算上のズレについて記事にします。
まず復習としてROIC(Return On Invested Capital)の計算式は以下になります。
ROIC=税引後営業利益÷投下資本×100 (%)
次に分母の投下資本は調達・運用のどちらのサイドに立ってみるかで変わるものの、今回は製造業における事業部単位で出す立場(運用側)での視点のため
投下資本=固定資産+正味運転資本
と考えます。そして一般的には正味運転資本=流動資産-流動負債で定義されます。この流動資産・流動負債を超ざっくりでいうならば棚卸資産・売掛金・買掛金になります。よって、投下資本の計算式は
投下資本=固定資産+棚卸資産+売掛金-買掛金
と言い換えられます。
特に来年度の予想や、中期経営計画等未来の事業予想においてはシンプルで分かりやすく、主要因であるこれらの変化だけを織り込むことが実務面では現実的です。そしてこれが実績とずれる理由です。流動資産・流動負債の他の項目に着目してみて下さい。
例えば流動資産の1つである有価証券。これが多い会社は予想でも織り込んでみて下さい。すると分母だけが大きくなり、ROICは悪化します。
特に昔ながらの日本企業ほど政策保有株式という有価証券を持っていることもありますが、これは 流動資産でありながら現金化もできず、ずっと持ち続けていることになります。これがあるから相手も弊社と取引をしてくれている、買収防止策で安心、などと考え会社は売却を嫌がるかもしれません。そんなときは有価証券の有り無しの2種類のROICを算出することで、上記メリットと天秤にかけ判断を仰ぐことが有効になります。
他にも流動負債の1つである未払金。数年に渡る大型設備投資を実施し、設備代金の未払金が特殊に発生しているときなどはその悪化を真摯に受け止め、固定資産になる前から織り込む必要があります。
上記は1例ですが、皆さんの事業において、流動資産・流動負債の項目で影響が大きい科目は最初から考慮しておかないと予実の大きな差になってしまいますので注意してください。
最後に、結局のところROICは差異分析するよりも、ROICを分解して細分化し、どの項目が自社のROIC低下の主因かを見極め、その対策をする方がよっぽど事業価値を高めます。次の記事でそれについてまとめますので、ご参考下さい!