原則1
公開日: 2022.02.20  | 更新日: 2022.02.27

米国における管理会計の原則とは?

管理会計とは会社内部のための会計であり、経営者の意思決定をサポートする仕事になります。経営企画等に興味がある人には面白い仕事だと思いますが、経理部と聞いたらほとんどの人が想像する財務会計の仕事をイメージしていた人は管理会計に戸惑うかもしれません。

財務会計は法やルールがあってきっちり何をするかがわかる。財務会計と比較する形で管理会計は社内向け、未来志向等いろいろと説明されるけれども、じゃあどういった仕事をすればよいのだろう?自分は今いる会社に特化したスキルを身に付けたいわけじゃない…。

そんな悩みを持つ人もいると聞いて、管理会計も頑張って磨けば他所でもやっていけるスキルになるということを、また漠然と不安なのもわかるので管理会計ではどんなスキルを磨けばいいか具体的に表現できないかを考えてみました。

もちろん管理会計の仕事は会社ごとの色があります。それでもどんな会社でも通用するコアの部分、本質は変わらないはず…そして調べていくと管理会計の原則というものを発見。

管理会計の原則って何でしょう?有名な企業会計原則と何が違うのでしょうか?

まず企業会計原則ですが、企業が会計業務を実施する場合の基本的なルールです。1949年に経済安定本部企業会計制度対策調査会が中間報告し、大蔵省企業会計審議会による1982年の最終改定で止まっています。よって昨今の新しい会計基準に追い付かずあまり実態を表していない状態…ですがその中の一般原則は企業会計原則における上位の概念であり、重要なので知っておいて損はありません。ここでは一般原則についてコメントします。

企業会計原則 一般原則

  1. 真実性の原則:真実を報告すること。虚偽報告や粉飾決算はしてはならない。

  2. 正規の簿記の原則:漏れなく・正しく・体系だって記帳しなければならない。(網羅性・立証性・秩序性)

  3. 資本取引・損益取引区分の原則:資本と損益は性質が異なるためにちゃんと分けなければならない。

  4. 明瞭性の原則:明瞭に表示し、ステークホルダーの判断を誤らせないようにしなければならない。

  5. 継続性の原則:一度採用したものは継続して適用しなければならない。

  6. 保守主義(安全性)の原則:企業の財政に不利な影響がある場合は、適当に健全な会計処理をしなければならない。

  7. 単一性の原則:複数の帳簿を作成してはならない。

これら一般原則のもと企業会計に携わるもの(財務会計)は行動をしていますが、管理会計は少し違います。なぜなら会社内部向けの数字であり、必ずしも企業会計原則に則ることが重要というわけではないからです。

原則4

では元に戻って、管理会計の原則とは何でしょうか?これは日本ではなく米国の管理会計人協会(IMA)による以下のデータで定義されていました。

https://www.imanet.org/insights-and-trends/strategic-cost-management/conceptual-framework-for-managerial-costing?ssopc=1

IMAによると管理会計の原則とは、以下の2つです。

管理会計の原則

  1. 因果関係の原則

  2. 類推の原則

因果関係の原則とは、原因と結果の関係を正しく把握しなければならないことを意味しています。例えば商品が売れた(結果)のは何が原因か。商品が優れていた・販売戦略が良かった・競合商品がいなかった…様々な要因がある中で、結果とその原因を正しく分析し把握することは管理会計では必要な原則というわけです。

正しく因果関係を結びつけるには、その企業や事業が持つ資源から投入された量・コストがどのように影響を及ぼしたかを金額面から導かなければいけません。そのためには原価計算や損益計算ができるかの知識だけではなく、そもそもどのような経営理念に基づき活動しているか、どんな資源があるか、業務内容は、内部データはどのように連携されているか…などの財務・非財務の情報が有機的につながることが因果関係を導く上で大切になります。

ただ適切な因果関係を導く上では、客観的に導けたか、正確に計算できたか、今後も同様に検証していくことができるか、そもそも測定可能か、重要性があるかなどに気を付けて対応することが好ましいです。

もう1つは類推の原則です。そもそも類推とは、両者間に類似点があることを根拠にして、一方がある性質を持つ場合は他方も同じ性質をもつであろうと推理することを指す論理学の言葉です。例えば去年の夏にある商品がよく売れたという事実に対し、今年の夏もその商品がよく売れるだろう…などと推理することが類推になります。

経営者の意思決定をサポートする管理会計において、ただ利益を報告するだけでは不十分で、会計的目線で次の結果を類推した発言ができることが必要不可欠なのは言うまでもありません。その時に気を付けることとしては、そうなってほしいなど個人の意見ではなく事実を公平に扱うこと、また複数の要因で結果が成り立った時に見落とさないことなどが挙げられます。

いかがでしょうか?管理会計原則と挙げられた因果関係の原則・類推の原則、私は確かにこの2つは管理会計における上位の概念で原則と言えると感じます。

そしてこれらの能力を身に付けることは決して1社限定のスキルではなく、どんな会社でも、どんな仕事でも役に立つ能力です。それにプラスで財務会計の知識もあるなら市場価値もより高まるでしょう。 ぜひこの2つの原則を意識して仕事に取り組んでもらえたら幸いです!

また今回は管理会計の原則についてまとめましたがそれとは別でグローバル管理会計原則というものもありました。なんとイギリスとアメリカの団体がグローバルな観点での管理会計の原則を作成したそうです。

その内容については以下の記事でまとめています。

これが世界標準?グローバル管理会計原則とは?

管理会計の原則を調べていたら米国管理会計人協会(IMA)のまとめる管理会計の原則なるものを発見しましたが、さらに調べてみるとグローバル管理会計原則なるものを発見しました。 ... 続きを読む

原則2

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この記事を書いた人
とら

あんも

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