在庫8
公開日: 2026.07.10  | 更新日: 2026.07.10

原料高でも利益が出る?製造業での実例解説。

中東情勢の原油高、ナフサ高。税金の影響でガソリンはあまり目立たないですが、ナフサは6.5万円/kLくらいから12万円/kLと一時は2倍近くにもなり製造業は大混乱ですね。

ナフサ影響は大きく、様々な原材料が値上がりの余波を受けていますが、原材料が値上がりしたら、普通はコストが増えて利益が減る、と感じませんか。

ただ実際は意外に利益は悪くない?、けれど気づけば何だか悪化している、という会社が出てくるかと思います。

こうなるのは会計の仕組みのせいなのですが、そもそもなぜ市況高でも利益が出るのか、といった点から実例を踏まえて解説します。

まず、原料費@100円で加工費@100円の製品を、売値@300円で販売している会社があるとします。①平常時は300-100-100=@100円の利益が出る会社です。

②原料高騰し、原料費@200円となったとします。多くの方のイメージは300-200-100=@0円となり、利益が悪化すると感じると思いますが、会計の世界ではそうはなりません。

理由は在庫の払出単価の計算方法です。多くの会社は総平均法と呼ばれる方法を選択していると思います。総平均法とは期首在庫と当期仕入れをならし平均単価を原価とする方法です。自社のルールを確認したい場合は有価証券報告書の重要な会計方針という項目があり、そこに重要な資産の評価基準及び評価方法があるので、見てみてください。総平均法による原価法といった記載があると思います。原価法という点に関しては後述で補足します。

例えば在庫100個@100円があり、今月100個@200円で仕入れたとすると、200個@150円で評価されるということです。そして評価された価格(原価)で会計の帳簿は記帳されます。

売値@300円のままで原料費@150円、加工費@100円となり、利益は@50円になります。ここが感覚とずれる原因です。なお、当月100個を販売すると、残った在庫100個@150円が翌月に繰り越されます。

さて、高騰すれば③価格反落する時期もいずれあります。原料@100円に戻った場合、期首在庫100個@150円と当期仕入100個@100円で、原料の総平均単価は@125円になります。

売値@300円で原料費@125円、加工費@100円で、利益は@75円になります。昔(①の時)の利益@100円には届きません。市況は戻ったのに利益は戻らず、高値在庫がじわじわ原価に残って利益を削る形になります。

在庫6

在庫9

対策1.価格反映

それができたら苦労しない、という一言に尽きますが、なぜ価格を上げなきゃいけないかが上記例を見ていただければわかると思います。

それに過去、損したから今値上げさせてください、といってももっと無理なわけで、②高騰期に合わせて値上げすることが重要なタイミングになるわけです。

値上げ幅の根拠づくり(在庫量や原単位を踏まえて、原価が実際いくら上がるのか)は難しいところですが、そこは経理財務のメンバーと相談いただければと思います。

ただ注意点もあります。顧客側もわざわざ高いときに買うか、という点です。特に市況を価格に反映しやすい事業環境では、価格が安いときに多めに仕入れて、高くなったら水準を落とす、といった動きです。

例えば上記①~③の例で、②高騰時に売値反映が無事できて、製品当たりの利益が①平常時と同じだったとします。また、それぞれが1か月ごとの情報として3か月の動きと考えたとき、販売量をAとBの2パターンで比べてみると、3か月の累計取引量(販売量)はAとBで同じ30でも、利益に差があるのが分かると思います。③は在庫単価が高く1個あたりの利益が薄いため、そこに販売が偏ると全体の利益が目減りする、という構造です。

価格を上げるとともに時期ずれの影響も出てくるし、それは取引先側の動きのため、予測は困難ですが、概念として知っておくと経理財務との会話がスムーズです。

在庫7

対策2.評価方法の見直し

在庫の払出単価の計算方法として総平均法の話をしました。先入先出法(や今は廃止済みの後入先出法)といった言葉は他にも色々とありますが、もう一つ有名なのが移動平均法です。これらは製品等の原価を算出するための方法です。損益を算出するために用いられている計算方法と考えていただいてOKです。

総平均法が後でまとめて平均する方法に対し、移動平均法は、在庫が移動するたび(仕入れるたび)に、都度新しい平均単価を計算する方法です。

仕入れるたびに単価が更新されるので、市況の動きが総平均法より早く原価に反映されます。原価や製品採算をタイムリーに把握できるぶん感覚に近くなりますが、その分事務負担は重くなりますので、システムの適切な活用が重要です。

また、有価証券報告書で確認いただいた方は、「総平均法による原価法」という表現で総平均?原価?どっちなの?と混乱されたかと思いますこれは前半(総平均法)は原価を出すための評価方法(損益計算書に必要)で、後半(原価法)は期末の在庫評価方法(貸借対照表に必要)の表現方法です。他の表現にすると、前半(総平均法)は計算方法(1個あたりの単価)で、後半(原価法)は評価基準(算出された単価を期末と比べる用)といった言い方もできます。

なぜこんな二段構えになっているのかというと、在庫の価値が下がったときに評価を切り下げる必要がある会計ルールのためです。帳簿上は100の価値があっても、陳腐化して・売れなくて・価値が下がってもはや30の価値しかないなら、それは30と評価しましょうという考えです。

ちなみに現在の会計基準では、この切下げは「原価法」という名前で強制されています(「低価法」という言葉もありますが選択肢が残っているのは税務の世界になります)。ただ、これは今までの話とは別の論点なので、ここまでにします。

注意点:キャッシュの動きとは合わない

今まで利益に関する感覚の違いを説明しましたが、キャッシュで見るともっとシビアです。原料高は総じて支払いが先行(キャッシュアウト大)になります。その中で、価格反映できず資金回収できる金額が不変となるなら、その分の資金繰りが悪化します。

いわゆる決算はよいけど資金繰りは苦しい、見かけの利益に税金も課税されさらに苦しく黒字倒産といった典型パターンになるわけです。

価格転嫁が当たり前の時代になり、下がったら下げるのか、便乗値上げはないか、どこかで目詰まりしてないか、等不安なことはいろいろとあるかもしれませんが、会計のからくりがひも解く糸口になりましたら幸いです。

最新の記事はこちら
広告
この記事を書いた人
あんも

あんも

大企業(製造業)の経理・財務で10年以上。工場・本社・海外と各拠点での業務経験で気づいたこと等をブログにしていきます。
経理・財務に興味がある人や同じ業種で働いている人のキャリアが少しでも豊かになる情報を、ブログを通して提供していきたいと思います。
趣味:
旅行。投資。
資格:
  • 証券アナリスト
  • TOEIC 800点台
  • 簿記2級
広告