為替1
公開日: 2024.07.31  | 更新日: 2024.08.13

期中平均レートを実例解説

為替ほど身近で分かりにくい、前向きに言えば奥が深いものはなかなかないと思います。経理と話してて何となくわかった気になるけれど、やっぱりわからない、ということはありませんか?その奥深さを紐解く1つのキーワードである期中平均レート(AR:Average Rate)について解説します。

まず期中平均レート(AR:Average Rate)とは、売上や売上原価・費用の換算用、つまり損益(P/L)に関する為替レートです。

商品をドルで売るので、円安になれば利益が増える、原料をドルで仕入れているので円高が嬉しい、等の観点で利用され、為替と言われイメージしやすいレートで、日常の感覚としても一番近しいレートかと思います。

ただ、平均をどの期間で計算するかで違和感を発生させる少し困った為替レートでもあります。期末に近づくほどに想定外の為替換算差の影響が出て、感覚が狂うということはないでしょうか?

それは決して経理の計算間違いではなく、数字のマジックです。さらに言うと、そういう計算方法をすることになっている会計のルールのせいです。

計算方法を言葉で説明するより実例で見る方がわかりやすいので、以下の例を参考に感覚のずれの認識頂けたらと思います。

為替5

まず前提として半年の為替が以下の通りだとします。

為替2

このようにARも月・四半期・半年・年間と、期間ごとの平均レートがあることに注意してください。

例1)日本(円)で作った商品を、米国(ドル)で販売する会社があるとします。そして、毎月7,000円で作り、100ドルで販売していることとします。その時の帳簿は以下の通りです。

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半期決算では外貨で稼いだ600ドル、これを半期の期中平均レート(125円/ドル)で換算し、600×125=75,000円となり上記図と同じで何ら違和感がないと思います。

例2)次に費用(製造原価)は変わらず7,000円ですが、4~6月売上は100ドル、7~9月売上は150ドルで販売できたとします。その時の帳簿は以下の通りになります。

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例1同様に、半期決算では外貨で稼いだ750ドル、これを半期の期中平均レート(125円/ドル)で換算し、750×125=93,750円となります。・・・例2の半期の売上は96,000円とあるので、2,250円のずれが発生していますね。これが違和感の正体です。

つまり、期中平均レート(AR)も月・四半期・半期・年のどの平均をするか、そして外貨の重みづけは月毎に異なるという点が計算差を発生させるということです。

(毎月の外貨×毎月の為替)の合計額≠半期累計の外貨×半期平均の為替

この差を為替換算差などで表現しますが、期末に近づくほど振れ幅が大きくなり違和感を発生させることになります。

今月は円安だから売上の為替換算差で利益が出ると思ってたけれど、今までの円高時の平均レートと外貨額では損になってしまう、といった貸借を逆転させ、説明を複雑にする正体についての解説でした。

最後に、この感度を経営者は感覚で知ることはできるかというと結構難しいです。

まず、上記例とは違って、為替の影響を受ける取引が多様であること。ドル以外のユーロや中国元等多様な通貨の売り上げがあったり、コスト側でも外貨情報があれば正確に出す難易度が跳ね上がります。

次に、各社の為替の考え方次第ではありますが、誤差を毎月or四半期等どの単位で調整しているかを経理と確認が必要です。

最後に、それで得られる情報が、経営判断に有効かというと財務会計(会社として決算書に繋がる正しい数字)と管理会計(事業における管理している数字)の誤差でしかないので、so waht?(だから何?)という情報とも言えます。

よって経営者は為替感度を理解して起き、単月の為替影響で一喜一憂せず、累計で見たら感度の範囲内かに注視し、そこからずれたらなぜか、という感覚を持っておけばよいのでは、と思っている次第です。

為替感度に関する記事は別途まとめたいと思っており、引き続きお付き合いいただけますと幸いです。

ご一読、ありがとうございました。

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この記事を書いた人
とら

あんも

大企業(製造業)の経理・財務で10年以上。工場・本社・海外と各拠点での業務経験で気づいたこと等をブログにしていきます。
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