有利子負債1
公開日: 2026.06.30  | 更新日: 2026.06.30

無借金経営と有利子負債

「借金ゼロの無借金経営」と聞くと、健全で優良な企業というイメージを持つ方は多いかもしれません。しかし、コーポレートファイナンス(企業財務)の世界では、一概にそうとは言い切れません。

今回は、企業の「負債」を2つの性質に分け、無借金経営に潜むリスク例とともに、有利子負債について解説します。

有利子負債と無利子負債

財務やコーポレートファイナンスの目線で考えると、負債は有利子負債と無利子負債に分かれます。

  • 有利子負債:利息を付けて返済する義務がある負債。 具体的には銀行等からの借入金(短期・長期)、社債やコマーシャルペーパー(CP)等が該当します。

  • 無利子負債:利息の支払いを伴わない負債。 商取引の慣行として自然発生的に生じる営業債務で、買掛金や支払手形、未払金、前受金等が該当します。これは事実上、コストゼロで資金を調達している状態と同義になります。

区分

定義

資金調達コスト(金利)

具体的な勘定科目の例

有利子負債

利息を付けて返済する義務がある負債

あり

借入金、社債、コマーシャルペーパー(CP)、リース債務など

無利子負債

利息の支払いを伴わない負債

なし

買掛金、未払金、支払手形、前受金など

有利子負債はその性格から、企業の安全性を示す指標や加重平均資本コスト(WACC)の算定にも利用されるため、財務・コーポレートファイナンスの分野で重視されています。

【補足1】リース債務について

今時点の日本会計基準の有価証券報告書に載っているリース債務はファイナンスリースによる債務等です。

ただ、日本の会計基準が新しくなり、2027年4月以降に始まる事業年度から、すべてのリース取引について原則、リース債務としてB/Sに計上することが義務化されます。一部の短期・少額取引は除かれますが、大型なものといえばオフィスビルの賃貸借契約などもリース取引として、リース債務に載ってくることになります。

いわゆるお金(現金)を借りて、現金で返す借入金とは違い、モノ(設備)を借りて、その代金として分割で返す(利息付で)という観点から、有利子負債と同じ扱いになるわけです。

IFRSや米国会計基準ではすでに乗り移り済みで日本会計基準も遅ればせながら同ルールになった次第です。

結果、今までB/Sに載ってこなかったリース債務が増えることになる点には注意です。

さらに補足の補足としては、上記でリース債務が増える企業は、コベナンツ等に注意してください。(いつか記事をまとめたいと思います。)

【補足2】貸借対照表(B/S)上の分類との違い

「有利子負債」や「無利子負債」という勘定科目が貸借対照表(B/S)に載っているわけではありません。

会計のルール上では、負債は短期的な支払能力を判断するために「流動負債」と「固定負債」に分けられ、こちらで記載されます。

  • 流動負債: 1年以内に決済・返済される予定の債務(買掛金、短期借入金、未払金等)

  • 固定負債: 決済・返済が1年を超える債務(長期借入金、社債、退職給付引当金等)

有利子負債2

無借金経営とは?そのリスクとは?

金融機関からの借入や社債がない、つまり「有利子負債がゼロ(もしくは同等の現金を保有している実質無借金)」の状態を無借金経営と呼びます。倒産リスクが極めて低く、安全性が高い状態と言えます。

しかし、コーポレートファイナンスの観点から見ると、無借金経営は「成長機会の逸失」という大きなリスクを抱えているとも言われます。主な理由は以下の3点です。

1.財務レバレッジ効果が働かない

最大の理由は、他人資本(借入など)を活用した「財務レバレッジ効果」が得られないことです。 自己資金のみの経営は、手元の利益剰余金の範囲内でしか投資ができません。もし競合他社が有利子負債をフル活用して積極的な設備投資、M&A、研究開発を行えば、あっという間に引き離されてしまう可能性があります。

例えるなら、無借金経営が「手堅く徒歩で移動している状態」であるのに対し、レバレッジ経営は「ローンで車を買ってハイスピードで移動している状態」と言えます。

2.いざという時のクレジットヒストリーがない

日本でも個人の信用スコアを算出する仕組みがニュースになったりしましたが、金融機関との関係性(クレジットヒストリー)は何かがあったときは超重要です。

企業と金融機関との関係性(クレジットヒストリー)は常日頃から構築するのが重要です。

パンデミック、世界的な金融危機や紛争など、予測不可能な危機はいつか必ず起こります。

手元資金に頼る無借金経営は安全に見えますが、資金が枯渇した時にはじめて銀行に駆け込んでも、金融機関は出し渋り、融資条件も悪くなります。

平時から金融機関と適度な取引をして信用を築いておくことが、将来の強力な保険となるわけです。

3.成長時の「資金繰り悪化」に対応できない

事業がスケールアップするタイミングでは、売上入金よりも先に、仕入れ代金や人件費などの運転資金が急増します。

この時、金融機関との借入枠(コミットメントライン等)が設定されていなければ、事業の成長スピードに資金繰りが追いつかず、最悪の場合は成長そのものがシュリンク(縮小)してしまうというパラドックスに陥ります。

適切な有利子負債残高は?

とはいえ、企業側も社外流出する有利子負債をいたずらに増やすのは抵抗があると思います。それを判断するためには財務健全性という観点で考えるとよく、それについては今後も記事をまとめていきたいと思います。

ご一読、ありがとうございました。

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この記事を書いた人
あんも

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大企業(製造業)の経理・財務で10年以上。工場・本社・海外と各拠点での業務経験で気づいたこと等をブログにしていきます。
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