みんなハッピー?ブロックトレードを解説
政策保有株の売却方法は様々ありますが、その中でブロックトレードと呼ばれるものがあります。ただ、ネットで調べても今一つわからない、とはいえ証券会社が言うことを鵜呑みにしてよいかわからない、そんな疑問に答えるべく記事をまとめました。
株式売却方法は沢山あります。個人投資家でネット証券で売買している方も多いかと思いますが、企業が所有する政策保有株となると量も多くて市場の売却をするには少々影響が大きくて売りにくいということがあります。そういった課題を解決する1つの手法が、ブロックトレードになります。
言葉について
ポイントについて
一連の会計処理について
各社のメリット・デメリット
1.言葉について
似た言葉が多くてややこしいです。ブロックオファーとブロックトレード・ブロックトレーディングは違うのでしょうか?ほぼ一緒です。ほかにもリテールブロック、マーケティングオファー、エクイティオファー、ブロックトレード等の言葉も出てくるかと思います。これらもほぼ一緒です。証券会社ごとで呼び方(商品名)が違ったりするだけで、主旨は一緒です。
その中で分かりやすかった野村證券の用語解説を引用します。
ブロックオファー:https://www.nomura.co.jp/terms/japan/hu/A03378.html
証券会社が、個別の保有株式をまとめて売却したい大株主からいったん株式を買い取り 、取引時間外に特定の投資家に割安で売却する取引のこと。売買価格は、取引日の終値を基準にして決められ、関係者には以下のメリットがある。
・大株主は、市場での大量の売り出しによる需給悪化懸念で株価が大幅に下落することを回避し、安定した資金調達ができる。
・投資家は割安価格で株式を購入できる。
・仲介者である証券会社は、大株主からの購入価格と投資家への売却価格の差額(差益)が得られる。
デメリットとしては、取引前に大量の株式売却の観測が広がると市場での株価の下落を招きやすく、大株主に損失が発生した場合には、ブロックオファーの取引自体に影響を及ぼす可能性がある。
2.ポイントについて
じゃあ同じだからとそのまま証券会社にお願いするのも心配になると思いますので、注意すべきポイントをまとめてみました。前提は、発行体(例:A社)の株を大量に保有している売却人(例:B社)があり、証券会社に売却を依頼する、という想定です。
・対象銘柄について
まずは売却したい株の情報を伝える必要があります。A社の株を売りたい、という形になります。ただし、インサイダー情報になりうるために取り扱いには最新の注意を払ってください。
また社内で政策保有株を売却する上での適切な意思決定をすることも忘れないでください。株を所管する責任部署が、社内のあるべき会議(取締役会や経営会議等)で売却の意思決定が会社として必要かと思います。
・販売先について
販売先が国内一般投資家か、国内機関投資家か。もしくは海外機関投資家か。
これによって売り 出し方法が変わっていくために、その点を明らかにする必要があります。株を大量保有している場合などは、発行体の意向が裏にあったりします。発行体として売却を制限はしないけれど、株主構成の観点から国内一般投資家に向けて売却してほしい、等と言われたら売却人としては、それに応えるべく販売先を指定する依頼をすることになります。
・売却規模(数量)について
大量保有の場合、市場の流通量次第では株価に大きく影響を与えてしまいます。よって、ここは証券会社を頼り、何日で売却できるか等の感触を伺う必要があります。対象銘柄の1日あたりの平均出来高などを参考に検討することになります。
・時期について
証券会社ごとに異なるかと思いますが感覚として1カ月前くらいでしょうか。具体的な名称は伝えずに、ブロックオファーする場合、いつまでに相談したらよいですか?とジャブを入れてみるのが良いかと思います。
と言っても、季節性や大型案件を抱えているかどうか次第のところもあり、売却をいつまでにしたい、とわかった場合は早めの連絡が好ましいです。(逆に絶対売却したいと思われると、後のコスト面で足元を見られるかもしれません)
・早期通知について
タイミングによってマンパワーの観点から出来高とは別で取引可能数量に制約がある可能性もあります。早割とかではありませんが、早期に通知することで人繰りの観点で、売却が円滑になる可能性もあります。またオフピークの時期の方が後述するコストも安くなるかもしれません。他にも証券会社側が持っているインサイダー情報とバッティングして売却ができない といわれる可能性もあります。そういう意味でも、早めに唾を付ける点は有効かと思います。
・コストについて
ここがみんなハッピー?とタイトルに繋がるポイントです。うまくはまれば関係者全員が納得できる状態となりますが、次の仕訳情報と合わせて解説します。
3.一連の会計処理について
上記ブロックオファーの説明で、段階を経て株のやり取りが実行されていることがわかると思います。ではそれぞれのフェーズでの会計処理について解説します。
3-1.政策保有の観点でA社の株を100でB社が購入した
3-2.B社は取引関係の見直しによりA社株の売却を決定。A社の株が550の価値とする。証券会社にブロックオファーし、ディスカウント後の500で買い取ってくれることになった。
3-3.証券会社はA社株を投資家へ530で売却
また、全体イメージは以下の通りです。
4.各社のメリット・デメリット
上記の会計処理に伴う各社の思惑は以下の通りです。
A社の場合
・コーポレートガバナンスを遵守(本心は過去より所有されていた1社に持ち続けてほしいけれど)
・株主政策として個人に持ってほしい、海外に売却したい等の希望がある場合、B社に申し送りやすい。
B社の場合
・政策保有株を売却できる
・ディスカウントとして株価よりも安く売却することになるが、一括で清算できる。
証券会社の場合
・安く仕入れて、高く売ることができる超お得な取引。
・買い取ったA社株を売却しきれない簿残リスクはあるが、腕の見せ所。
投資家の場合
・市況よりは安く仕入れられるのでA社株に興味がある場合、お得な取引。
・将来の株価はわからないものの安く購入できた分の下駄は履いている状態。
株所有者のB社、証券会社、投資家全員がメリットのある手続きだとお分かりいただけたかと思います。この数年で株の売却が進みましたが、まだまだある政策保有株。これを機にさらに日本が飛躍するといいですね。