配当2
公開日: 2026.05.20  | 更新日: 2026.05.20

配当政策と社内還元制度の再構築

配当政策としてDOE(自己資本配当率)を採用する企業が増えています。株主としては喜ばしい反面、企業としては業績に連動しない固定的な資金流出を抱える状況になりました。

業績が良いときは問題ありませんが、少し陰りが見えてきたら大変です。例えば中東情勢の緊迫化による原材料高騰で運転資金が膨らんだり、業績悪化で営業キャッシュフローが減少したりしても、自己資本に大きな変化がなければ配当額は維持されます。最悪の場合、「配当のための外部借入」という本末転倒な事態にもなりかねません。

また、連結ベースでDOEを導入しながら、グループ会社(特に海外子会社)からの配当還元制度が旧態依然としたままでは、さらに深刻になってしまいます。

  • 現地で資金需要がある

  • 不透明な経済環境に備え、現地でキャッシュを多めに残したい

  • 現地の方が金利が高く、日本に送金するより運用効率が良い

現地側はもっともな理由を並べますが、本社もDOEという強い累進配当をコミットしている以上、グループ内に対しても強力な資金回収メカニズムの構築が必須になるわけです。

また、海外の場合は税金の課題も発生します。国際的な二重課税を排除するための「外国子会社配当益金不算入制度」の対象国であっても、配当額の5%は益金参入(課税対象)となります。

例えば、米国子会社から100万円相当を配当する場合、免除対象会社であっても、5万円は課税所得に。法人税を30%とすると、1.5万円は納税が必要となります。

一方でその100万円を米国で3%で運用(普通預金)すれば、3万円の金利収入が得られます。

1.5万円の税金を払ってまで日本に戻すのと、現地で運用して増やすのは、どちらが正解か?という問いに対し、本社側は明確な回答を迫られることになります。

配当3

本社側のできる回答はおそらく以下になります。

  • 資本コスト(WACC)で考える:株主からの期待収益率を超える努力を会社はしなければならない。3%では全く満足できる状態ではなく、グループ全体としてみれば3%の資金運用は価値を毀損している。より高い成長事業に投資が必要だ。それはグループ全体で見直しており、本社に戻してほしい。

  • 資金調達コストとの比較:運用以上の資金調達が発生していれば、グループ全体で効率が悪い

  • 時間軸(一過性か継続性か)と単利と福利:永年にわたり資金が足りない場合、利払いは借入期間中発生し続ける。また配当は単年度のコストに対し、利払いは足りない場合、雪だるま式に借入が増え続けることになる。

  • 指標への影響:有利子負債の増加などが経営指標の悪化(自己資本比率等)につながり、目先のコストを回避することが、グループ全体の信用力や将来の資金調達力の低下につながる

条件は企業ごとで異なるかと思いますが、配当政策の論点整理にご活用いただけたら幸いです。

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あんも

あんも

大企業(製造業)の経理・財務で10年以上。工場・本社・海外と各拠点での業務経験で気づいたこと等をブログにしていきます。
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