調達手段の1つである社債発行業務をポイントごとにまとめてみました。次は開示対応、主に発行登録制度について解説します。
社債を発行するには、会社法と金融商品取引法に則り様々な書類を提出しなければいけません。これは投資家保護のためのディスクロージャー制度の背景があります。
社債の発行に限らず、企業が出す情報(有価証券報告書等)が正確・公平に適時開示されることで、投資家は自己責任の範囲で投資を行える環境が整備されことになります。それを達成すべく、あれやこれやと資料が必要なわけです。
1.目論見書
社債は目論見書の作成(金商法第13条)が必要です。作成に必要なフォローは証券会社に依頼しましょう。個人向けの場合は追加コストが発生する可能性が高いですが、普通社債の場合は既存情報のままで課題がないはずです。
2.有価証券届出書(参考情報)
一定規模等要件を満たす有価証券(株式や社債)の発行時は有価証券届出書を内閣総理大臣に提出しなければいけません。ただ権限は委任され、財務局長等が担っており、企業の所在地の管轄財務局に提出する流れになります。実務上はEDINETで提出し報告します。
が、社債の発行で有価証券届出書を出しているところはほぼありません。有価証券届出書の代わりに発行登録書を提出することで、機動的に発行できる特例があるからです。
頻繁に社債を発行する企業の場合は発行登録書を活用することで業務を簡略化できるメリットがあります。継続開示要件や周知性要件を満たす必要があり、自社が要件を満たすかは証券会社が教えてくれるはずですが、上場企業ならば基本課題ないはずです。
どれくらいメリットがあるかを事例を調べてみました。
2023年3月22日に楽天銀行が株式上場のために有価証券届出書を提出しました。これは220ページの超大作です。上場株式の情報なのでそれはもちろん大量な情報提供が必要となります。(社債の有価証券届出書は見つけられませんでした)
2024年2月27日に楽天グループが株式発行の発行登録書を提出しました。こちらは26ページです。
2024年12月20日に楽天グループが社債の発行登録書を提出しました。4ページです。
グループ間の違い、株式か社債かの違いがありますが、いかに発行登録書が簡素化され、機動的な発行ができるかが分かるかと思います。
3.発行登録書(本題)
機動的に簡略化して発行できる発行登録書は金商法第23条や他様々な条文で要件が定まっています。
まず、有効期間は1年または2年を選択可能です。簡略化を趣旨とするならば2年を選択するところがほとんどではないかと思います。
ただ提出しても効力が発生するのに1週間ほど必要(投資家の検討時間)なので待機時間が発生する点はご注意ください。登録時に管轄財務局に連絡することになるので、そこで確認することになります。
他には発行予定額又は発行残高の上限、資金使途、参照書類(有価証券報告書、半期報告書、臨時報告書、訂正報告書等)や参照書類の保管情報等を報告することになります。
ただし、提出した発行登録書の登録内容に変化があった場合は、内容を訂正すべく訂正発行登録書を提出する必要があります。

4.訂正発行登録書
金商法第23条の4や開示府令第14条の5等で提出理由が定まっており、
参照書類と同種の書類が新たに提出されたとき
発行予定額の見込みがなくなったとき(=減額する)
減額せざるを得ない事情が生じたとき
引き受けを予定する金融商品取引業者の主たるものに異動があったとき
効力発生予定日に変更があったとき
上記の場合、訂正発行登録書の提出が必要になります。
要は発行登録書の内容に重要な変更があったときと言えますが、実務上は参照書類の情報が変われば訂正発行登録書の提出が必要という点が少々厄介です。
参照書類は有価証券報告書や半期報告書が対象とあるわけで、半期・年度ごとに訂正発行登録書の提出するのは…超面倒です。
が、金融庁も流石にそれは大変だろうと有報や半報等継続的に開示をしている参照書類に対しては訂正発行登録書は免除する方針を出しています。
免除の要件は発行登録書の継続開示資料に法定提出期限を記載すること。有価証券報告書は6月30日までに関東財務局長に提出予定、といった記載をすればOKということです。(いつまでに出すと宣言し、実際に出したのだからわざわざ訂正発行登録書を出す必要はなくなるイメージ)
ただし継続的ではなく、予想もできない臨時報告書や訂正報告書の提出時は訂正報告書の速やかな提出が必要なのは変わらないので注意が必要です。
5.発行登録追補書類
発行登録書の効力発生後はいつでも社債の募集をすることが可能となりますが、実際に募集する際は発行登録追補書類の提出が必要です。(金商法第23条の8)
発行登録追補書類では社債の募集要項やその引き受け証券会社や社債管理を行うもの、改めての資金使途や参照書類や参照書類の保管情報を報告することになります。
6.実務面では
開示すべき資料とその根拠をまとめましたが、何をいつまでに出さなければいけないか、この点は証券会社を上手に頼るのが一番です。
社債を発行するうえで、最終的には発行登録追補書類の提出が必須です。なければ社債が発行できないために、証券会社もしっかりとフォローをしてくれるというわけです。
EDINET提出資料は半角・全角の使い方等、お作法的な入力方法があります。それが価値を生むかはともかく、たくさんの企業が自由に開示したら投資家も比較がし辛くなるので一定のルールが必要なのも確かです。
そういったお作法はプロの証券会社が一番詳しいので、作成した資料のチェックを証券会社にお願いし、ダブルチェックするのをおすすめする次第です。
ご一読ありがとうございました。次は社外関係者についてまとめます。