
社債実務の解説(引受方式のメリット・デメリット)
社債を発行したい企業(発行体)の社債を販売するのは証券会社の引受方式(販売方法)は主にリテンション方式(トランスペアレンシー方式)・ポット方式ですが、それぞれのメリット・デメリットについてまとめてみました。
また、発行体にとってのメリットは、投資家にとってのデメリットになる(発行体は安い金利で調達したいが、それは投資家からすると利回りの低い投資先になる)ことが多いです。よって、特徴という形でまとめていきます。
そもそも引受方式の違いについては以下の記事を参考お願いします。
リテンション(トランスペアレンシー)方式の特徴
昔からある方式で日本の投資家・発行体ともに馴染み深い
事務主幹事(トップレフト)を任命しつつ、各証券会社ごとにシェアは割り当てる(責任の明確化)
証券会社は競合関係。他社との違いが出る(独自の販売網がある、特定の投資家(アカウントX)がいる等)。中央から地方まで、大口から小口まで、各社競って多様な投資家に声をかける環境があるために条件決定がタイト化(発行体メリットで投資家のデメリット)する可能性がある。
投資家からすると、複数の証券会社から同じ案件の営業を受けることになる。各証券と付き合いがある場合は3億円のオーダーを1億・1億・1億と分けて発注する等、忖度が発生しうる(1社をひいきにしない。)ただし、複数の証券と取引するために、1つの案件で複数社の契約が必要になる事務手間が発生する。
証券各社の負担が明確なので、実力を見誤り、捌けない量を証券会社に引き受けさせてしまったら悲惨。発行会社は困るし、事務主幹事証券(トップレフト)も困る。売れなかった証券会社が能力不足の烙印を押される。
POT方式の特徴
2017年ごろから徐々に普及している方式
証券会社は協力関係。証券会社の販売網を全力で活用することができる。ただし、協力において全証券が全員全力を出しているか測る方法が難しい。(在宅で仕事ができる人もサボる人もいると思うならば、サボる証券会社がいてもおかしくはないでしょう。組織も人ですから。)
投資家は1つの案件にエントリーするだけなので事務面は簡素化できる。
大手の金融機関(中央投資家)への販売が重要な局面に採用=多額・大型の社債調達時に活用される傾向がある
最終需要から販売分への配分(アロケーション)において発行体の意思を入れることができる

ポイントは情報の透明性(トランスペアレンシー)かと思います。簿残の存在が市場環境を混乱させないようにとPOT方式のアイデアがありつつも、リテンション方式も情報の透明性を確保された方式が構築されたので、この点では2つの方式に大きな差が生まれなくなりました。
よって、後はそれ以外の要因でどちらが好ましいかを決めることになるかと思います。
できるだけタイトに条件決定したい発行体にとっては現時点ではリテンション方式が、証券会社がより努力をする環境が整っているためおすすめです。成行でオーダーをしやすい地方投資家を取り入れやすい環境もそれを後押しします。
ただ調達額が多額になり、中央投資家の需要を集めるニーズが大きくなるとPOT方式も1つの選択肢になってきます。ただし、POT方式だとエントリーできない、といった投資家もいる可能性もあり、最新情報を証券会社から確認をするのが重要です。
証券会社に確認するときも注意が必要です。証券会社の実力によって回答が違う可能性があるからです。
リテンション方式を勧める証券会社:自社の販売網で売れる自信がある。独自の販売網やアカウントXの存在で具体的な投資家がいる証券会社。
POT方式を勧める証券会社:シェア分を販売できないと考える証券会社。他社の販売網やアカウントXの存在を知りたいと思う証券会社。
聞く相手がどのような背景があり、なぜそれを進めているかの理由について注意してください。
最後にアカウントXについて補足します。
アカウントXとは匿名希望の投資家のことです。トランスペアレンシーにより、業として預金又は貯金の受け入れをすることができる者(≒いわゆる金融機関)は実名を開示しなければいけませんが、要件に該当しない投資家は匿名でいることができます。ので、そういった先のことを匿名・開示不同意・アカウントX等の呼び方で丸め込まれます。例えば超富裕層の個人であったり、事業会社等が該当することになります。

