15年ぶりのプログラム改定!22年度からの証券アナリスト試験の概要
15年ぶりのプログラム改定(3回目)で22年の春試験から新カリキュラムの試験に変わる証券アナリスト試験、その影響について調べてみました。科目が6つになった!2次の内容が1次にもやってきた!と最初は驚くかもしれませんが、詳しく調べてみたら結構お得な変化かもしれません。改定内容を詳しく調べてみました。
カリキュラム体系の再編
今回の体系変更の目玉です。科目が6つになって、1次と2次に分野の違いはなくなりました。ですがカテゴリー名称が変わっただけで勉強しないといけなかった範囲に変化はなさそうです。具体的に見てみましょう。
試験科目Ⅰ.証券分析とポートフォリオ・マネジメント(新)
「証券分析」に関しては新旧で特に変化はなさそうです。新しい学習事項にて定義されている証券分析業務は以下の通りです。(CMA資格の取得に求められる主要学習事項と学習ポイントより1次試験範囲を抜粋)この内容は今までの証券分析(旧)の内容とほとんど変わりません。よって、証券分析(新)の勉強方法は今までと大きく変わらないと言えるでしょう。
<株式分析>
・資本市場の仕組みと株式投資
・株式投資と企業のファンダメンタル分析
・株式価値評価モデルの基礎
<債券分析>
・債券の種類
・特性と債券市場の仕組み
・金利と債券価格評価
・金利の理論、期間構造とスプレッド
・債券のリターンと金利リスクの分析
・証券化商品の仕組みと評価
・社債投資と信用リスクの分析
・債券ポートフォリオによる投資戦略
<デリバティブ分析>
・デリバティブの種類と機能
・先物・先渡取引の仕組みと評価
・オプション取引の仕組みと評価
・金利・通貨を対象としたデリバティブ
・デリバティブを用いた投資戦略
<ポートフォリオ・マネジメント>
・現在ポートフォリオ理論
・投資政策とアセット・アロケーション
・機関投資家の資産運用
・個人投資家の資産運用
・投資パフォーマンスの測定・評価と提示
試験科目Ⅱ.財務分析(新)、コーポレート・ファイナンス
「財務分析(旧)」が「財務分析(新)」と「コーポレート・ファイナンス」に増えたので、増えた「コーポレ ート・ファイナンス」の学習事項を調べてみました。
<コーポレート・ファイナンス>
・株式会社のしくみ(株式会社の基本。所有と経営分離の仕組み等)
・企業の事業・競争戦略(資金調達プロセスや意思決定、SWOT分析等)
・コーポレートガバナンス(エージェンシー問題等)
・投資の意思決定(CF、現在価値、資本コスト)
・資本コストと資本構成(負債コスト、株主資本コスト、WACC)
・企業価値評価(FCF等)
・企業のリスク管理と運転資本管理(ROE、CCC等)
初めて見る人は難しいと思うかもしれませんがこれらは今までも普通に出てきた内容です。ただ「証券分析(旧)」のファンダメンタル分析の範囲が含まれていると解釈すると「証券分析(旧)」と「コーポレート・ファイナス」でテレコが起きているかもしれません。(テレコ:あべこべな状態。入れ違いな状態。)ですが、「証券分析(新)」の学習項目にも株式分析の中にファンダメンタル分析は変わらず残っていたので、出題が増えて手厚くなるのでしょうか?科目合格のため一気に受験する必要はないのですが、新しいカリキュラムの科目Ⅰと科目Ⅱの親和性が上がっているので、まとめて受験をする方が勉強効率良い気がします。
試験科目Ⅲ.市場と経済の分析、数量分析と確率・統計、職業倫理・行動基準
経済(旧)が今回のカリキュラム変化の影響を大きく受けています。ですが、これは多くの人にとって朗報な変化だとも感じます。そもそも経済(旧)は様々な多くの理論を学んでも試験に出るかどうかで得点が変わり、覚えた箇所が出なければ一気に得 点できず不合格になってしまう可能性が他の試験科目に比べて高かったのですが、①計算問題が入ったことで数式を覚えたら必ず得点できる問題が増えた、②職業倫理という2次試験の得点源になるおいしい問題が1次試験にもやってきた、これらのことから得点しやすくなったと考えることができるからです。
この記事を読んでいる方は2次試験の勉強方法をまだ知らないかもしれませんが、旧2次試験ではこの職業倫理が重要な得点源でコストパフォーマンスの高い学習科目でした。(合格に必要な250点のうち、60点近くをこれで補える。)それが1次にも適用となったのでこれは明らかに朗報です!
次に新しく抜き出された数量分析と確率・統計について詳しく調べてみました。
<数量分析と確率・統計>
・お金の時間価値(ファイナンスの基礎)
・リターン、利回り(NPVやIRR)
・統計の基礎(正規分布等)
・確率変数(いわゆる確率)
・確率分布(正規分布からのショートフォールやVaR等)
・推定と検定
・回帰分析(単回帰)
・微分の基礎
・最適化手法
後半が高校数学ですが、基本的な統計の知識を身に着けて、解答に必要な数式を理解(もしくは暗記)したら手堅く解答できると思います。
1次の試験時期や試験時間、出題形式に変化なし
22年度以降の1次試験に関しては現状とほぼ変化ありません。昨今の事情を考慮してオンライン試験等の可能性もあるのかと思っていましたが、 残念ながらまだのようです。しかし2次試験は今まで7時間(420分)だったのですが、6時間(360分)に変化しています…!これも朗報です。7時間もペンを書き続けるのは本当につらいので…。6時間でも大概ですけれども。2次試験の詳細は現時点でこれくらいです。(減った時間分、1次にずれ込んだ職業倫理の2次の問題が減ったらちょっと大変ですね。)
学習支援ツールのリリース(21年内目標)
過去の1次試験の問題をPCやスマホで利用できる専用アプリで学習できる学習支援ツールがリリースされるそうです。確かにマークシート形式の1次試験では過去問を沢山こなすことが重要なので、アプリ化して隙間時間で勉強できるのは有効活用可能かもしれません。新しいカリキュラム体系ごとに分かれたアプリ設計ならば22年度の最良の過去問題集になりそうです。そうじゃなくてただ詰め合わせただけなら…まぁ普通のアプリですね。
とはいえ証券アナリスト協会のHPは会員になると過去問を自由にDLできます。TACの過去問は問題内容ごとの分類のため、時間を図って通して勉強するときはHPからのDLが便利なので、勉強対策としてぜひ活用してみてください。
これらの情報、グラフは証券アナリスト協会のHPにあるものから作成させていただきました。根拠や詳細をご確認されたい方はぜひ公式サイトにてご確認ください。