勉強2
公開日: 2021.05.17  | 更新日: 2021.05.29

証券アナリスト1次試験の概要と勉強法

1次試験は春と秋の年二回(4月下旬と9月下旬)試験があり3科目別に実施されます。科目合格制で3科目合格後の翌年に2次試験を受けられる仕組みのため、同年度の春と秋の2回の間に全科目合格することを目指すことで効率よく(覚えたことも忘れる前に)2次試験に進むことができるのでお勧めです。

  • 証券分析とポートフォリオ・マネジメント

  • 財務分析

  • 経済

これら3科目はマークシート試験で合格率は50%±5%ほどの中のレンジに収まっています。半数の人が合格していることから勉強をすれば受かる試験と思ってよいですね。試験の合否は、上位一定割合の受験者の平均得点を基準に決定するため、何点以上取れば合格というものではないのですが、過去データから6割が合格ラインの目安になっているようです。また19年に受けた私も6割は確かに感触として近しいと思っています。

1次配点1

<1次試験全般の勉強法>

1次を受かるだけなら戦略を立てて勉強するだけで合格率が格段に上がります。勉強して半分の問題が確実に解答できるとするとこれで50%。残りのわからない50%を鉛筆転がして確率で解答して正答となる確率は25%(4択のマークシートのため)から12.5%の得点を見込めます。これで50%+12.5%=62.5%となり合格圏です。

次に半分以上過去問と同様の問題が出てきます。つまり過去問が最重要のテキストとなるので過去問を解きつつ、わからない箇所は参考書で勉強する方法が最適です。(逆に全範囲をきっちり勉強しようとするほど範囲が膨大でドツボにはまると思います。)ただし2021年1月27日に日本証券アナリスト協会が「◆証券アナリスト第1次試験に関する重要なお知らせ」を発表しました。これによると22年度より新しい教育プログラムによる試験になるようです。ですが現行プログラムの科目合格は、新プログラムの新科目の合格とみなされるとあることから、3科目受験という大きな流れは変わらないと考えられます。新プログラムになり、今後の問題がどうなるかは要確認ですが、合格率5割を減らすとは思えないので、勉強方針は過去問を中心に、基礎問題は確実に解答できるようにすることが対策となり結局勉強方針は変わらないと思っています。

3科目の勉強の順番は好きな範囲・得意な分野から始めるのが良いと思っています。それで自信をつけて、さらにこれだけ勉強したからもったいないと残りを頑張る仕組みです。大学で経済を学んだことがある人や、暗記科目を先に学ぶことが好きな人は経済がおすすめですし、事業会社で分析を仕事で携わっている人や、計算問題が得意な人は財務分析がおすすめです。金融業界でバリバリ証券業務に携わっている人は証券分析を先にするのもありです。ですがどれを先に初めても得意分野を完璧にすることに固執せず、6割で良いからと次に進むことを忘れないでください。6割で次に行って、3科目を終えてから事前の復習でまた取りこぼしたところを拾っていけばどんどんレベルが上がっていくはずです。

最後におすすめの書籍ですが、TACの証券アナリスト教材になります。過去問題と解答が証券アナリスト協会のHPにあるとはいえ、詳細な解答がないことから過去問題集は必須です。(逆に通して過去問題を解きたいときは協会HPにあるPDFを印刷して実践してください。)ですが、TACの解答もその問題に適した解答しかありません。公式の応用や変換までは記載されていないので、過去問題集にある公式だけを覚えても片手落ちになってしまうからです。

例えばROEは純利益÷自己資本で算出できますが、PBR/PERでも算出できますし、EPS/BPSでもあります。(ROA+(ROA-負債利子率)×負債比率)×(1-法人税率)でもあります。一つの数式を覚えるだけじゃなく各種の繋がりがあり、そういう補足情報は総まとめテキストの方が優秀なので、過去問で出てきた公式をテキストで調べる方法で理解を深めてみてください。

ともあれ最初は気づかないので、問題を重ねていくうちに前覚えた公式との不整合が出てきて、前はこう言っていたのに何で違うのかと総まとめテキストを調べて行く形で知識を増やしていくのがお勧めです。

<1次試験:証券分析とポートフォリオ・マネジメントについて>

1次配点2

配点が一番高くボリュームも多い試験です。(証券アナリストのメイン試験ですからそりゃそうですが。)ここで勉強したことが2次試験に活用されるので、最初は大変でも一つずつ専門用語や数式を自分のものにすることが1次(そして2次)の攻略となります。とは言っても、完全に理解することは難しいと思いますのでその時はとにかく①公式を覚えて、②過去問を何度も解いて合格を目指してください。大切なものは多いですが重要な公式等を列挙してみました。このあたりをより注意して確認してみてください。

2. ファンダメンタル分析

ROEとROAの公式、PBRとPERの公式、EPS・BPS、インタレスト・カバレッジ・レシオ、企業価値EBITDA倍率、VRIO、固定長期適合率、債務償還年数、CF比率、負債比率等。

3.株式分析

CAPM、株式価値(配当割引モデルや残余利益モデル)、益回り、サスティナブル成長率、残余利益、理論株価等。

4.債券分析

割引係数、パーイールド、スポットレート、修正デュレーション・コンベクシティ、価格の変化率等。

5. デリバティブ分析

プットコールパリティ、先物の理論価格等。

6. ポートフォリオ・マネジメント

相関係数、ベータ、リスク中立確率、正規分布、シャープレシオ・インフォメーションレシオ、金額荷重収益率・時間荷重収益率等。

<1次試験:財務分析について>

1次配点3

計算問題は簡単。ただし、公式を覚えていなければ解けないために公式を覚える必要がある点が注意です。出題範囲は広いために全てをフォローするわけではなく、自分が手堅く解答できる範囲を増やしていってください。おすすめは過去問を解きながら覚えたい公式が出てきたらメモをしていくことです。試験前にそのメモを見るだけで正解率が一気に高まります。

そして勉強順番としては大問4や大問3等の後半から解くことです。なぜなら会計知識(簿記3級や2級知識)がない人がいきなり勉強しても、覚えますとしか言えないし、一時的な知識は忘れやすいです。TACの過去問題集も会計のルールの順番で、財務会計総論から始まり、B/Sの資産→負債→純資産と学び、次に損益計算、企業連結会計と続いてやっと財務諸表分析と株式価値評価です。でも馴染みのない人が理論を学ばないままいきなり4択問題を勉強してもただのクイズです。試験として手堅く流れを勉強するなら財務諸表分析や株式価値評価から初めて財務分析とは何をするものか、ということを知ってから、そのあとに営業利益って、在庫って…と学ぶ方がわかりやすいはずです。(つい最初から過去問を勉強しようとしてしまうと思うのですがつまらないし、わからないし、あきらめてしまうと思いの助言でもあります。)1つずつ覚えても、単発の記憶は他と有機的に結びつきません。ならば最初から総合問題で会計問題を流れで勉強する方がまだ意味が分かりやすいです。更に、後半問題の方が同じ傾向の問題が出やすいために手堅く得点しやすいです。

また株式価値評価は証券分析とも被るため、ここで学ぶ配当割引モデルやFCF、残余利益、現在価値等はしっかりと身に着けておきましょう。将来の自分を助けてくれるはずです。他にはROEの分解問題やROAは頻出問題にもかかわらず1度理解してしまうと手堅く解答できるのでおすすめです。

さて、今までは試験範囲の38点/90点(約4割)の勉強に関する内容です。ここをミスしつつも解答できると30点は取れるはずです。合格に必要な点は残り24点を正誤問題と個別の計算問題(大問1と大問2)の52点でとる、つまり半分正解すれば合格できることになります。

ここからは受験者が得意な分野を磨けばよいと思います。個人的には分野の広い、財務会計総論や企業結合会計よりも、根本でかつ重要な資産・負債・純資産・損益(要はB/SとP/L)がおすすめです。

<1次試験:経済について>

1次配点4

経済は大学で学ぶ1学部の学問であり過去からの様々な学説や公式があることから、いろいろと覚えることが多い、でも出題されないこともあり、覚え損というものも出てきます。理屈を理解することはこの試験では求められていないため、とにかく頻出する公式を覚えて何が出ても基礎問題は解答できることが重要です。更に最近は見慣れない問題がちょっとずつ出てきて難易度が上がってきているようです。そういうのが出てきた時こそ基礎を押さえて合格点を確保しましょう。

ミクロ経済学は状態価格や価格弾力性、消費者・生産者余剰、ギッフェン財…例を出したらたくさんありますが、企業行動ゲーム理論はパズルみたいなもので理解したら(もしくは計算式を覚えたら)満点を狙えるのでぜひ勉強してください。それ以外は過去問に出ている範囲を学ぶくらいで十分です。参考書にある他の知識を増やすならば他科目の勉強時間に費やす方が良いです。

マクロ経済学は何といってもIS-LMとAD-ASを勉強してください。これは2次でも頻出の問題です。それ以外もフィッシャー方程式や、投資乗数、総生産成長率と様々な分野がありますが、ミクロ同様、過去問範囲を学ぶ程度に抑えて次に行きましょう。

金融経済は金融業界では常識なのかもしれませんが、業界外や勉強中の立場の人間には少しつらい範囲です。ただ幸いにも知識じゃなくても一般常識で対応できそうな問題もわずかにあることと、4択であるがゆえになんかこの単語見覚えあるという雰囲気解答ができるので数点でも稼ぐことを目指してみてください。 国際経済は為替が最重要です。実行為替レートや、絶対・相対的購買力平価説は式さえ覚えておけば手堅く得点できます。

日本の金融機関では最重要な資格であり、事業会社でも社外からの目線や感覚を養うことを目指し取得が推奨され始めている証券アナリストですが、合格率も5割で勉強さえすれば合格できる資格です。でもその勉強が辛い…。ぜひ、少しでも楽になるようにこの戦略と勉強法を参考にしてみてください。ご一読ありがとうございました!

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この記事を書いた人
とら

あんも

大企業(製造業)の経理・財務で10年以上。工場・本社・海外と各拠点での業務経験で気づいたこと等をブログにしていきます。
経理・財務に興味がある人や同じ業種で働いている人のキャリアが少しでも豊かになる情報を、ブログを通して提供していきたいと思います。
趣味:
旅行。投資。
資格:
  • 証券アナリスト
  • TOEIC 800点台
  • 簿記2級
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