
コーポレート・ファイナンス実務の教科書(読書感想)
松田千恵子さんのコーポレート・ファイナンス実務の教科書を読んで、JTCの経理財務の立場としてのためになったこと・感想等を自分の備忘録としてまとめます。
1. 「利益」は意見、「キャッシュ」は事実
かつての日本企業は「売上至上主義」だったが、現代では「キャッシュ(現金)」こそが正義。なぜなら、利益は会計操作である程度「作る」ことができるが、キャッシュは嘘をつかない。
押さえておくべき重要指標
フリーキャッシュフロー (FCF): 債権者や株主に自由に分配できる「余剰」の現金。これが企業の真の体力。
EBIT / EBITDA: 支払利息や税金、償却費を差し引く前の利益。国による税制の違いや、会計上の償却方法に左右されずに「稼ぐ力」を比較可能。
2. 負債(Debt)か資本(Equity)か:究極のバランス
企業価値最大化に向けた「資本構成」の最適化を意識する。負債の節税効果やレバレッジ効果の活用。
項目 | 負債(Debt) | 資本(Equity) |
|---|---|---|
コスト | 低め(節税効果あり) | 高め(株主の期待リターン) |
返済義務 | あり | なし |
ガバナンス | 債権者による制約(コベナンツ) | 株主による経営参加 |
3. 資本コスト(WACC)をどう下げるか?
投資家が期待する見返り=企業にとってのコスト(資本コスト)。このハードルレートを上回るリターンを出さない限り、企業価値は上がらない。
経理財務部門としては「売上アップ」以外のできることを実施。
最適な資本構成の追求: 安い負債と高い資本のバランスを整え、全体のコスト(WACC)を下げる。
情報開示(IR): 投資家との対話を通じて「不確実性(リスク)」を減らし、期待リターンを下げさせる。
4.資金調達とM&A:手段を目的化しない
お金の集め方は、銀行借入、社債、増資、アセットファイナンス(証券化)など多様な手段あり。
銀行との付き合い方
銀行は「期日までに返せるか(キャッシュフロー生成能力)」を重視。
契約に含まれるコベナンツ(財務制限条項)は、いわば「守るべきルール」。これを破ると「期限の利益」を喪失し、一括返済を迫られるリスクがあり。
M&Aの罠
手段か目的化:M&Aは「時間を買う」手段だが、多くの企業が「買うこと自体」が目的になりがち。
のれんの呪い: 日本基準では償却可能だが、IFRSでは非償却。ただし、業績が悪ければ一気に「減損」として損失が発生なので注意。
シナジーの幻想: 投資家は自分で分散投資できるため、単なる多角化(コングロマリット)を嫌う。
実務の教科書とあるだけあって、とても詳しくわかりやすくまとまっていて、もっと早く出会えていればと思いました。
コーポレート・ファイナンスの中でもすべてを担う人はCFOかと思いますが、多くのJTC経理財務はその一部を担っていると思います。どうしても自分の業務範囲しかわからないことが多いですが、企業の全体概要を知れる為になる本でした。

