
マンション管理組合のための経理財務分析(修繕積立金)
マンションの管理組合に選ばれました。面倒ですが、同じ建物に住む者同士、一定の義務があるかと思いますので、頑張ります。
職業病かもしれませんが、マンションの住人として特に気になるのは修繕積立金だと思います。
インフレの世界になりコストが毎年上がるかもしれない中で、今の管理費・修繕積立金の額で十分なのか?いつか請求金額が高くなるのではないか?その時マンション全体でちゃんと積み立て出来ているのか等心配は漠然とあるかと思います。
その時の安心を少しばかり増やすべく、管理組合の立場として、お金で気を付けるべき点を調べたので、自分用の備忘録として残します。
1.現状把握
修繕積立金の残高を確認します。その残高が減っていたら理由を調べます。
してはいけないはずですが、管理費への充当だった場合は毎月の維持費が足りていないので、
・費用の見直し
・管理費の値上げ
が必須です。
2.計画見通し
ここは専門じゃないので正直わかりません。既存の長期修繕計画表が正しいのか、甘い見積もりなのかどうかも判断つきません。それに対しいえることは
・(なんでもというわけではないが)AIに分析してもらう
・見積は複数(2社以上)にとる
が素人が思いつく観点です。経理財務としては、
・インフレを考慮する(それを上回る運用が必要)
というのも1つあります。
3.運用
根本的に足りない修繕費はもちろん住人から集めるしかないのですが、簡単に集められないから難しいですよね… 。大規模修繕に向けて必要な資金を集めるうえで、管理組合側が持っているアドバンテージは資金力と時間(マンション次第?)だと私は考えます。
つまり、将来のリスクを低減するために、管理組合として早期の資金運用が重要だと考えます。
例えば1,000万円あり、年0.5%の金利で10年間運用した場合、福利効果もあって、10年後には+51万円になります(税や残高証明書等の維持コスト除く)。
が、お金のこととなると管理組合で滅茶苦茶もめます。+51万円も「たった51万円」と感じるか「51万円も」と感じるかは人それぞれです。
個人の投資ならご自由にですが、管理組合のお金なのでローリスク(安全性)が前提にあると考えます。
次に時間軸で考え、必要になる時期までどれだけの時間が残されているかで選べる商品が限定されると考えます。(1年後に必要か、10年後に必要かでとれる選択肢が変わる)
あとは分散投資です。この分散というのが重要で、それが管理組合のもめごとも解決できる可能性が高いと考えます。
例えば定期預金、とマンションすまい・る債で運用先を分けると、全体のニーズを満たしやすくなるためです。運用手段の分散です。
他にも時間分散も有効です。長いマイナス・低金利時代が終わり、金利が変動してきました。今すぐ定期預金で全額預けてしまうと、来年もっと高い金利で運用できたのに、となってしまうかもしれません。
その時にまずは短期間の定期預金で運用しつつ、また来年に機会を残すのも手があります。
ベストを尽くすのは大切ですが、運用(しかも複数人の意思決定)に おいてはベターで十分だと考えます。何が最適なんてわかっていたら運用のプロで、素人の我々ができるのは、ポートフォリオを分けて、ひっそりと運用するくらいしかできません。

4.反対意見とその反駁
他にもいろんな意見があると思いますので、意見をまとめました。
<リスク・リターンに関する意見>
Q:定期預金等の金利は雀の涙しかなく、もっと利率の良い投資信託での運用が良い。
A:修繕積立金は「投資」ではなく「保全」が最優先。元本割れリスクを誰が責任取るかが問題。管理組合の目的は「お金を増やすこと」ではなく「確実に支払える状態を確保すること」
Q:格付けの高い大企業の社債ならば安心ではないか。
A:必要な時に現金化できる流動性と安全を天秤に考えると、定期預金やマンションすまい・る債が限界。
<銘柄選びやコストに関する意見>
Q:大手銀行は金利が低い。ネット銀行等はもっと金利も高いしコストも安い。
A:個人とは違い、管理組合は人格なき社団であり、口座開設は審査が非常に厳しい。
また、毎年管理者(理事長や会計担当)が変わる役員間で、適切に継承できるかも課題。大手銀行は金利面等で劣後するかもしれないが、実務上のリスクを考えると、窓口対応も可能な大手銀行はガバナンス上もより安全である。
Q:毎年必要な残高証明書のコストが無駄だ。
A:管理組合としてガバナンス上必要なコストです。横領防止のため必要な手続きです。
Q:国債の購入はできないのか?
A:管理組合(人格なき社団)は新窓販国際が購入可能で、個人向け国債は購入できない。ただし27年1月からは個人向け国債を買うことができるようになる模様。
ただし、
・国債は金融機関(証券等)を通じて申し込みが必要(新たに証券会社へ取引が必要)
・総会決議事項である(それはすまい・る債等も同様)
・満期保有で元本保証(個人向けは1年後以降は元本割れのリスクはなくなる)
等注意は必要
5.増額への意見
今まで運用に関する意見をまとめましたが、もう1つ上の階層として「そもそも修繕積立金のお金がない(足りてない)」という課題もあるかもしれません。それに向けては「積立金 を増額する」しかないのですが、これまたもっと多くの意見が出てくると思います。増額への反対反対意見を3種類(金銭的理由・公平性への不満・当事者意識)の観点でまとめてみました。
<金銭的理由>
Q:今でも十分に生活できている。増額は家計が苦しくなるので反対。
A:事実の共有+複数案の提示:例)今の資金計画では修繕ができない。具体的にはエレベーターが止まると修繕できなくなる。最悪、事故でけが人が出るかもしれない。そのようなマンションは価値が下がり、全住人に不利益が出るため組合としては容認できない。足りなくなってから各世帯に巨額請求をすることもできるが、予測できる今のうちに少しずつ備えるべく今回増額したい。
Q:増額の前にコスト低減や見直しが先ではないか。
A:事実の共有+試算の提示:例)現在の積立金額は月〇万円だが、国土交通省のガイドラインの平均金額と比較すると△万円も足りない状況。また見積は複数購買もしているが、現状のままでは見積を□%まで値下げできないと発注できない。
<公平性への不満>
Q:私は1階でエレベーターを利用しないので、その分の負担はしたくない。
A:将来の影響の提示:例)マンションとは区分所有の運命共同体です。エレベーターが使えないと、上階層の住人が出ていき、空き家が増え、管理費も滞ります。管理不全のマンションは不動産価値がゼロとなり、売るに売れなくなりますので、建物全体の機能維持が必須です。
Q:車は乗らないので機械式駐車場のコストは負担したくない。撤去してほしい。
A:駐車場単独の採算性の計算:例)駐 車場を利用しない世帯にとっては維持費は無駄に感じるかもしれませんが、現在、所有者から徴収した積立金は〇万円ほどあり、今回必要な機械式駐車場の修繕費を上回っています。(足りない場合は、駐車場の維持費を値上げも検討)
<当事者意識>
Q:(高齢であることや投資用のため)長く住むつもりはないので、将来のことまで負担したくない。
A:資産価値の提示:例)終の棲家と思っている方や、売却を検討されている方もいるかもしれませんが、相続や、中古購入する方も必ず「修繕積立金の充足」を確認します。不足しているマンションはそれだけ相場より安く買いたたかれてしまいます。そうならないための適正な値上げと前向きにご判断お願いします。
色々と調べてみましたが、運命共同体のマンションって自分だけではどうにもできない範囲もあるので大変ですね。せっかくの機会なので、しっかりとお役目果たします。
